前回の記事では、左官の版築という手仕事が、食卓の時間を上質に整える——そんな〈版築かまど〉の魅力をご紹介しました。今回は第二弾として、おいしい炊き上がりに近づくための「炊き方のコツ」をお伝えします。
〈版築かまど〉が目指すのは、しっかり火を使い、釜の中に対流を起こして炊き上げること。炊き上がりが「お米が立つ」——その違いが、いつもの一膳を特別にします。
まず押さえたい、〈版築かまど〉の“おいしさの前提”
炊き方のコツは、難しいテクニックではなく「整える順番」です。
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火力:しっかり火を入れて対流を起こす
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燃料:基本は「30g」を基準に考える
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蒸らし:最後に香りと甘みを落ち着かせる(ここで差が出ます)
固形燃料の選び方と使い方
〈版築かまど〉は、市販の固形燃料で使える設計です。
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1合につき:固形燃料30g程度を1つ
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2合なら2つ、3合なら3つ
まずは30gを基準に試し、炊き上がりを見ながら微調整していくのがおすすめです(手仕事ゆえ個体差もあります)。
指定はございませんが,、以下のようなアルコール系の固形燃料をお求めください。
火力の微調整(銀紙で整える)
固形燃料の周りの銀紙(箔)をめくることで火力を上げられます。めくる範囲を広げるほど火力は強くなりますが、そのぶん燃え切るのも早くなります。「もう少し香ばしく」「もう少しやわらかく」など、仕上がりの好みが出てきたら、この微調整が効いてきます。
おいしく炊くための流れ
ここからは基本の流れです。お米の品種、新米/古米、室温、水温で前後します。最初は基本に忠実に、次に自分の好みにあわせた炊き方を試すのがおすすめです。
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浸水:20分(目安)
研いだお米を浸水させ、芯までゆっくり水を含ませます。この下ごしらえが、炊き上がりのふっくら感と粒立ちを支えます。 -
点火〜炊飯:20〜30分(目安)
固形燃料に点火したら、あとは基本的に見守るだけ。しっかり火を入れることで釜の中に対流が生まれ、炊き上がりが「お米が立つ」状態を狙います。コツ:途中で蓋を開けたくなる気持ちを、少しだけ我慢。香りと湯気の立ち方が合図になります。 -
蒸らし:20分(目安)
火が落ちたら、そのまま蒸らします。蒸らしは「余熱で仕上げる時間」。水分が落ち着き、香りと甘みが整っていきます。 -
ほぐし:仕上げの所作
蒸らしが終わったら、底から空気を入れるようにやさしくほぐします。つやが出て、粒がほどけ、食感が一段きれいに仕上がります。
よくあるご質問:2合用・3合用で1合は炊けますか?
はい、炊けます。2合用でも、1合分のお米と水で炊飯できます。3合用も同様に、お米と水を1合に合わせてセットすればOKです。
仕上がりを“好み”へ寄せる小さなヒント
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少し硬めが好き:浸水を短めに、または水をほんの少し控えめに
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ふっくらが好き:浸水を丁寧に、蒸らしを気持ち長めに
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香ばしさが欲しい:銀紙のめくり方で最後の熱を整える
おいしいお米は、それだけで食卓の空気を整えてくれます。特別な何かを足さなくても、湯気と香りが立ち上がる瞬間から、いつもの時間が少しだけ贅沢になる。〈版築かまど〉は、その“日常のごちそう”を丁寧に仕立ててくれる存在です。
次回は、長く美しく使うためのお手入れ(煤・焦げ・釜の扱い)をご紹介します。
